2021年6月26日 (土)

地球少女アルジェナ【アニメレビュー】

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最近、ESGというものを調べ上げています。
ESGというのは、環境や人権などを重視する経営手法です。

長らく、特に日本では、企業というのはカネを儲けて、株主に配当することが最大の使命という企業観が支配的でした。
最近は、ステークホルダー経営という形で、こうした株主資本主義への修正が加えられる傾向があります。
最近よく聞く「パーパス経営」というのも、パーパスという企業の目標をスローガンに掲げることが本質ではなく、社会をよくするという目的=パーパスが企業の存在意義で、金儲けは、必要不可欠ではあるが、まあ手段であって目的ではないという企業哲学の転換が背景にあります。

このような世の中の価値観の変化を目の当たりにしたとき、2001年に放映され、誰に知られるでもなく爆死したカルトアニメ「地球少女アルジェナ」を思い出しました。

「地球少女アルジェナ」は、「マクロス」や「創聖のアクエリオン」を代表作に持つアニメ作家、河森正治さんが原作・監督を務める作品です。

タイトルの「地球少女」からもわかるように、ジャンルは魔法少女もの。
魔法少女まどか☆マギカ」などと同じジャンルですね。

主人公は、有吉樹奈(ありよし じゅな)。タイトルのアルジュナをもじった名前です。
アルジュナといえば、多くの日本人にはなじみの、ヒンドゥー教の神話「マハーバーラタ」の主人公であるカウラヴァ王国パーンダヴァ派の王子ですね。

え?知らん?
そりゃそうだ。

物語は、この主人公 樹奈が、彼氏とバイクでニケツして、事故って死ぬところから始まります。
臨死体験で病院の集中治療室で自分の死体を眺める樹奈が、クリスという金髪オッドアイの美少年に宇宙に呼び出され、地球は瀕死の状態であること、地球に巣食うラージャという怪獣と戦い、浄化するなら、もう一度命を与えることを告げられます。

いわば「まどか☆マギカ」のキュウベイみたいなもので、僕と契約して魔法少女になってよ、と持ち掛けるわけです。

なお、クリスという名前が、「マハーバーラタ」でアルジュナを導く、ヴィシュヌ神の化身(アバタール)であるクリシュナから取っていることは、日本人ならすぐにピンときますよね?ね?

本作は2001年の作品なので、すんなりと契約した樹奈は生き返り、ラージャが現れる現場に急行します。
そこは、敦賀湾の原子力発電所。
地球環境保護団体SEEDが乗り込み、緊迫した雰囲気に包まれます。

SEEDの女指揮官は、もうすぐ原発事故が起こると所長に告げ、所長は「原発は4重の安全装置があるから、絶対安全だ」と切り返します。
2001年ですから、原発が絶対安全なのは当然ですよね。

そして、主人公そっちのけで、お話は原発の是非論に!
(主人公、原発の中にも入っていません)

結局、ラージャに攻撃され、暴走する原子炉。
どこか遠くにいるお偉いさんは、原発事故により「もしもの時は一千年の都も人の住めぬ死の街となる」と最悪の事態を覚悟します。

原発所長は、所員を全員避難させ、自分一人で、原子炉の暴走を止めに行きます。
その所長にSEEDの女隊長は
「原子炉はリスクが大きすぎるわ。それに建設コストや核廃棄物の保管を含めればほとんど採算は取れない。現に欧米では原発の建設を中止したり廃止したりしている国が」
と今週のお説教タイム。

アルジュナでは、毎週、登場人物によるエコ説教があり、シュールギャグとして楽しめます。

説教された所長は
「君に言われなくても分かってる」

意外と所長、原発推進派じゃないんだ。

そして青い光を放つ原子炉・・・

まあ、本来ならこれで西日本は壊滅ですが、これはアニメ、クリスの活躍で、なんとか最悪の事態は回避されます。
主人公の樹奈は、まったく役に立ちませんでした。

怒ったクリスは、樹奈に「お前は穢れている」「穢れを払え」と言って、樹奈を日本アルプスに捨てて帰ります。

そして次のエピソード、自然農、ようするに農地を耕さず、農薬も肥料も与えない、雑草と虫が育つに任せる農法をやっている仙人みたいな爺さんに樹奈は拾われ、近代農法の闇を学びます。

その後も、Mのマークが印象的なハンバーガーをめぐる、成長促進剤や保存料たっぷりの加工食品の闇とか、詰め込み教育の害、遺伝子操作の話を通じて、樹奈は地球の危機に目覚めていくのです。


この「地球少女アルジェナ」、2001年の放送当時には「なんじゃこれ」と思い、一周回ってシュールギャグかとも思いましたが、3・11を経験し、僕の中では再評価です。

自然農も「さすがに趣味の世界だよ」と思っていましたが、ESGを調べていくと化学肥料を使わず、農地を耕さない「リジェネラティブ農業」は、今日ではリアリティがあると知り、驚きました。

こうしたエコ話に加え、背景にあるヒンドゥー教サーンキヤ哲学(みんな大好きヨガの理論面ね)も今の時代に合っている気がします。
まあ、河森さんなのでサーンキヤ哲学そのものというより華厳っぽいと思いましたけど。

そういうわけで、エコとかサスティナを考える人は、ぜひ見てください。

2020年8月 6日 (木)

serial experiments lain【アニメレビュー】

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今日のアニメレビューは『serial experiments lain』、アニメとしては98年の作品です。

この作品は、日本史、日本アニメ史ではなく、日本史において、極めて重要な位置にある作品です。
それは、日本の指導的立場の人々が、本作を理解していれば、その後の日本のIT敗戦はなかったかもしれないという意味で。

まずは、作品のあらすじから。

主人公の女子中学生、岩倉玲音のもとに、自殺した同級生から「私は肉体を捨てただけで、まだ生きている」「こには神さまがいる」「早くワイヤードに来て」というメールがくる。
そして、下校中に死んだはずの、無言の彼女に会う。
その後は、友人と訪れた渋谷のクラブで、自分のドッペルゲンガーが徘徊していることを知る。
玲音は、真相を知るべくワイアード(要するにインターネット)の世界に足を踏み入れる。

本作品のクライマックスはLayer:09(第9話)で、世界観の根幹が、かなり乱暴に暴露されます。
それは、ニューエイジ思想家たちの虚実入り混じった実験、理論、構想の積み重ねとして描かれます。

・ロズウェル事件、米国政府がUFOの残骸を回収し、宇宙人と密約を結んだという陰謀論だが、この事件の中心人物と目される科学者ヴァネヴァー・ブッシュは、1945年に反透明化されたスクリーンにマイクロフィルム化された情報を映し出すシステム「MEMEX」を提唱。この機械により人間の記憶を拡大することをもくろんだ(今でいうWikipedia)。

・ジョン・C・リリィは、インディオの麻薬物質とアイソレーションタンクによる感覚遮断実験によって人間の無意識を探り、無感覚の中、宇宙的存在を感じ、それを「E.C.C.O(地球暗号制御局)」と呼んだ。

・テッド・ネルソンは、衛星軌道上に巨大な静止電子図書館を打ち上げ、電波と電話回線によって地球上のどこからでも利用できるデータベースの構想、「Xanadu(ザナドゥ)」 を1960年に発表。現在のWorld Wide Webに結実している。

・地球には、電離層と地表との間、ELF帯に8Hzの周波数で常に共鳴が起こっていて、これを「シューマン共鳴」と呼ぶ。

・「バイラル・メディア」「デジタル・ネイティブ」などの概念を提起したことでも知られるダグラス・ラシュコフは、地球の人口はが脳内のニューロンと同じ数に達し、人間同士がネットワークで相互接続する事により、地球自身の意識をも覚醒しうると主張している。

本作は、こうしたニューエイジ思想家の思想を積み上げ、シューマン共鳴により、人間がデバイスなしに意識を接続させることができるのではないか、というフィクションを取り込むことで、ネット上に集合無意識が生まれ、ネットの集合無意識を人が現実として受け止める可能性を示唆しています。


重要なのは、このオカルト的展開ではありません。
重要なのは、シリコンバレーを中心とした、IT革命の基本思想は、こうしたニューエイジ思想であり、単純に便利なテクノロジーというものではないということです。

ただ、日本人にとって、ニューエイジはなじみが薄く、胡散臭く、受け入れがたいものがあります。
本質的に、ニューエイジは、西洋における近代化の失敗を、仏教などの東洋思想を取り込みながら乗り越えようとするものですが、日本人は、なまじ東洋人なので、切実な課題意識を持つことができず、西洋の物質文明の正義を鵜呑みにしているところがあるからです。

しかも、ニューエイジのコア思想は、相当に悪い意味でヤバイのです。
そのため、本作においても、ニューエイジの最大のグル(導師)の名は、周到に隠蔽されています。

その名は、ティモシー・リアリー、ニクソン政権に投獄された『神経政治学』の著者です。


リアリーの主張は、生物は8段階の段階を踏んで進化していくというものです。

人間は、今4段階目で、5段階目は、大麻などの薬物を通じて、3次元を超える認識を持てると言ってます。。

6段階目は、少し難しく、意識(神経組織)が、意識自体を再プログラムする、つまり、自らを新しい可能性に自分でプログラミングする段階と言ってます。そのためには、LSDなど化学ドラッグを使うと考えています。

7段階に入ると、科学ではよく理解できないというか、書いている本人もわかってないのではないかと思うのですが、神経組織がDNAから直接情報を取得できる段階と言ってます。しかも、DNAは、宇宙のすべての情報を持つアーカシックレコードだそうだ。(AKIRAのクライマックスは、この話)
リリーの研究者の中には、この情報を集団的無意識と呼んだりしますが・・・

第8段階は「量子レベルで脳ががユニットや関係をとりむすんでいく」と翻訳に書いてますが、書いた本人も、訳した人もわかってないだろう、という感じです。
まあ、日本のある天才が、第8段階を見事描いたのですが、それは後述。


さて、リリーの主張は、社会的にも健康上も受け入れられるものではないのですが、この思想から「電子デバイスを通じた人間知性の拡張」というコンセプトが生まれます。
その成果は、全世界で実現してますよね。
「そうiPhoneならね」

iPhoneというのは、アラン・ケイが、「MEMEX」と「Xanadu」を携帯できるように構想した「DynaBook」を具現化したものです(ケイ自身は両者の影響を明言はしてません)。

つまるところ、日本が受け入れられなかったITは、単に便利な新技術なのではなく、技術により人間の知性を進化させたいという思想が中心あったのですが、思想を嫌う日本では、その表面をなぞるしかできず、社会の中に存分に取り入れることもできなかったわけです。

日本人は、思想やビジョンの重要性を、もう少し実感した方がいいでしょう。

さて、長くなりましたが、最後にリアリー思想の日本における継承者について紹介しておかなければいけません。

リアリーの思想の中で興味深いものに「SMI^2LE」(Iは二乗)があります。
宇宙移民(SPACE MIGRATION)、知性増大(INTELLIGENCE INCREASE)、寿命延長(LIFE EXTENSION)の頭文字をとったものです。

「将来人類は、自分の好みにデザインした惑星である H.O.M.E.s(High Orbital Mini Earths 高軌道のミニ地球)に移住する。宇宙に出ると意識拡張が起こる」というものです。

どこかで聞いたことありませんか?

「ララアにはいつでも会いに行けるから」とか言ってますよね。


まあ、当人は「ハイラインの『宇宙の戦士』をモデルにしました。宇宙コロニーはオニールの構想です」といって、決してリアリーの名は口にしませんが・・・

 

2020年7月26日 (日)

コングレス未来学会議【アニメレビュー】

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今日のアニメレビューは『コングレス未来学会議』です。

2013年公開(日本では2015年公開)のイスラエルとフランス合作映画です。
とはいえ、実際にはかなりたくさんの国の参加があったようですが。

原作はスタニスワフ・レムの『泰平ヨンの未来学会議』、1971年のSF小説です。
スタニスワフ・レムは、ポーランドのSF作家で、日本で有名な作品は『ソラリス』(ソラリスの陽のもとに)があります。

映画『コングレス未来学会議』は、女優のロビン・ライトがプロデューサーの一人に名を連ねており、原作とは異なったテーマと構成になっています。
ロビン・ライトさんは、ネットフリックス躍進の立役者になった『ハウス・オブ・カード 野望の階段』で重要キャラクターのクレア・アンダーウッドを演じたことも印象深いですね。

さて、まずは原作ですが、これは泰平ヨンという宇宙飛行士の宇宙版ガリバー旅行記ともいえる泰平ヨン・シリーズの終盤のお話です。

未来学会議というのは、人口問題(人口爆発)を扱う国際会議で、そこに専門家でもないが義理で参加することになった泰平ヨンがテロで有毒ガスを浴び、その幻覚作用で夢幻の世界を彷徨うという筋立てです。

どうにもコールドスリープで140年ほど眠らされていた泰平ヨンが目覚めると、そこは豊かな理想社会でした。
しかし、違和感を感じたヨンは、次第に真実に近づいていき、その世界は、既に滅びに瀕しており、支配者は、その現実を隠すために、薬物で人民に「幸福で豊かな生活をしている」という幻想を見せているということがわかります。

「われわれがこの文明に麻酔をかけたのだ。さもないともちこたえられないんだ。だから覚醒させるわけにはいかない」
「合法に登録されている人口だけでも690億、他に登録されていない非合法な住民が260億はいる。(中略)ここ15年か20年で氷河期がやってくるだろう。その進行を阻止することは不可能だし、遅らせることもできない。できるのは隠すことだけだ」

SFなので薬で幻想を見せていますが、統計をごまかして不景気をイザナギ以来の好景気と言ってみたり、いつの時代も、どの国も、嘘偽りで現実をごまかしていることに変わりはありません。

為政者も手をこまねいて滅びを待っていたわけではありません。
他の惑星への移住を計画し、宇宙飛行士を送り込み、惑星改造を試みました。
しかし、起こったことは、専門家による偽の報告ばかりが返信され、予算が無限に膨らむだけで、何一つ進捗しませんでした。

「ウィルスのワクチンは1年でできます」とありえない報告をする「専門家」の意見を鵜呑みにするしかない政治家の姿が浮かびます。(治験をすっ飛ばして、安全性も効果も不明なワクチン物質ならできる可能性もあるけども)

さて、原作のテーマは、滅びという目に見える未来に、人間という生き物の業は手も足も出ないというものですが、映画版は少し変わります。

まず、未来学会議の前に、がっつり映画の尺の半分を使って、技術の進歩で「職業」を失う女優の葛藤を描きます。
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かつて大女優であったけど、今や落ち目のロビン・ライトに、映画会社が彼女のすべてのデータをスキャンし、電子女優にしたい、彼女本人は二度と演技をしてはいけないという契約を持ち掛けます。
この契約をめぐる葛藤の物語を実写で描きます。

ロビン・ライトやハーヴェイ・カイテルの見事な演技が光るパートです。
CGなんかにとって代わられるものか、というロビン・ライトの秘めた情熱が伝わってきます。

中盤からは、女優を引退し20年たったロビン・ライトが映画会社主催の未来学会議(本作では新商品発表会)に招待され、幻覚剤でアニメの世界に迷い込みます。
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ここからは陸地が海になり、奇妙な魚が泳ぐなど、サイケデリックな映像センスを楽しむパートになります。
日本アニメにはない映像センスをお楽しみください。
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映像については、万国アニメ名場面や有名アートの博覧会が見れます。
主人公が飛ぶシーンは「ハウル」を思わせますし、

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主人公の娘が所属している自然主義者の世界はヒエロニムス・ボスの『快楽の園』のようです。

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登場人物も、どこかのアートで見たような・・・

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本作はハリウッド批判は、がっつり入ってますが、文明批判は薄味なので、つながりは悪いのですが、終盤は、主人公が家に置いてきた障害を持つ息子を探して現実世界に帰ることになります(主人公がコールドスリープしている間に行方不明になっている)。

現実世界に戻った主人公に知らされるのは、息子は半年前に幻想世界(アニメ世界)に旅立ったという・・・すれ違いです。

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さて、ここで主人公がとった行動は・・・


本作の名優たちの演技とアニメと実写のシームレスな連携は圧巻です。
お暇があればぜひご覧ください。

 

2018年12月22日 (土)

tvk「クルマでいこう!」

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最近、ポルシェほしい病を発症して、Youtubeでポルシェの映像を漁っていました。

この熱病自体は、じきに止むと思うのですが、Youtubeを漁る中で、tvkの「クルマでいこう!」という番組がを見つけました。

番組のフォーマットが昔、東京に住んでいた頃に見ていた自動車番組に似ているので、懐かしいなと思っていたのですが、これは勘違い。

当時の番組は「新車情報」という番組でキャスターも別の人のようでした。
通りで記憶と比べてキャスターの語りが甘口だな、と思いました。

で、なんでわざわざこの番組を取り上げているかというと、tvkつまりテレビ神奈川が気前よくYoutubeに番組まるごとをアップしていることに気前の良さ、というか時代を感じたから。

確かにプロがコストを掛けて作っているので、ユーチューバーの映像よりクオリティが高く、音声もクリア。
プロとアマの差を見せつける内容です。


スタジオのセットのセンスもいいです。
ガレージを思わせる小屋組にミニカーや自動車のイラストと楽しい画作りです。

「クルマでいこう!」は、tvkが番組を公開する真の意図はわかりません。

正直、地方UHF局が、この先、生き残るのは厳しいと思います。
しかし、この番組とネット公開という取り組みを見ると、地方局がコンテンツ制作会社として生きる可能性を示した番組じゃないかと思います。

それがTV局にとって幸せかはわかりませんが。

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