2020年8月 6日 (木)

serial experiments lain【アニメレビュー】

Serial-experiments-lain

今日のアニメレビューは『serial experiments lain』、アニメとしては98年の作品です。

この作品は、日本史、日本アニメ史ではなく、日本史において、極めて重要な位置にある作品です。
それは、日本の指導的立場の人々が、本作を理解していれば、その後の日本のIT敗戦はなかったかもしれないという意味で。

まずは、作品のあらすじから。

主人公の女子中学生、岩倉玲音のもとに、自殺した同級生から「私は肉体を捨てただけで、まだ生きている」「こには神さまがいる」「早くワイヤードに来て」というメールがくる。
そして、下校中に死んだはずの、無言の彼女に会う。
その後は、友人と訪れた渋谷のクラブで、自分のドッペルゲンガーが徘徊していることを知る。
玲音は、真相を知るべくワイアード(要するにインターネット)の世界に足を踏み入れる。

本作品のクライマックスはLayer:09(第9話)で、世界観の根幹が、かなり乱暴に暴露されます。
それは、ニューエイジ思想家たちの虚実入り混じった実験、理論、構想の積み重ねとして描かれます。

・ロズウェル事件、米国政府がUFOの残骸を回収し、宇宙人と密約を結んだという陰謀論だが、この事件の中心人物と目される科学者ヴァネヴァー・ブッシュは、1945年に反透明化されたスクリーンにマイクロフィルム化された情報を映し出すシステム「MEMEX」を提唱。この機械により人間の記憶を拡大することをもくろんだ(今でいうWikipedia)。

・ジョン・C・リリィは、インディオの麻薬物質とアイソレーションタンクによる感覚遮断実験によって人間の無意識を探り、無感覚の中、宇宙的存在を感じ、それを「E.C.C.O(地球暗号制御局)」と呼んだ。

・テッド・ネルソンは、衛星軌道上に巨大な静止電子図書館を打ち上げ、電波と電話回線によって地球上のどこからでも利用できるデータベースの構想、「Xanadu(ザナドゥ)」 を1960年に発表。現在のWorld Wide Webに結実している。

・地球には、電離層と地表との間、ELF帯に8Hzの周波数で常に共鳴が起こっていて、これを「シューマン共鳴」と呼ぶ。

・「バイラル・メディア」「デジタル・ネイティブ」などの概念を提起したことでも知られるダグラス・ラシュコフは、地球の人口はが脳内のニューロンと同じ数に達し、人間同士がネットワークで相互接続する事により、地球自身の意識をも覚醒しうると主張している。

本作は、こうしたニューエイジ思想家の思想を積み上げ、シューマン共鳴により、人間がデバイスなしに意識を接続させることができるのではないか、というフィクションを取り込むことで、ネット上に集合無意識が生まれ、ネットの集合無意識を人が現実として受け止める可能性を示唆しています。


重要なのは、このオカルト的展開ではありません。
重要なのは、シリコンバレーを中心とした、IT革命の基本思想は、こうしたニューエイジ思想であり、単純に便利なテクノロジーというものではないということです。

ただ、日本人にとって、ニューエイジはなじみが薄く、胡散臭く、受け入れがたいものがあります。
本質的に、ニューエイジは、西洋における近代化の失敗を、仏教などの東洋思想を取り込みながら乗り越えようとするものですが、日本人は、なまじ東洋人なので、切実な課題意識を持つことができず、西洋の物質文明の正義を鵜呑みにしているところがあるからです。

しかも、ニューエイジのコア思想は、相当に悪い意味でヤバイのです。
そのため、本作においても、ニューエイジの最大のグル(導師)の名は、周到に隠蔽されています。

その名は、ティモシー・リアリー、ニクソン政権に投獄された『神経政治学』の著者です。


リアリーの主張は、生物は8段階の段階を踏んで進化していくというものです。

人間は、今4段階目で、5段階目は、大麻などの薬物を通じて、3次元を超える認識を持てると言ってます。。

6段階目は、少し難しく、意識(神経組織)が、意識自体を再プログラムする、つまり、自らを新しい可能性に自分でプログラミングする段階と言ってます。そのためには、LSDなど化学ドラッグを使うと考えています。

7段階に入ると、科学ではよく理解できないというか、書いている本人もわかってないのではないかと思うのですが、神経組織がDNAから直接情報を取得できる段階と言ってます。しかも、DNAは、宇宙のすべての情報を持つアーカシックレコードだそうだ。(AKIRAのクライマックスは、この話)
リリーの研究者の中には、この情報を集団的無意識と呼んだりしますが・・・

第8段階は「量子レベルで脳ががユニットや関係をとりむすんでいく」と翻訳に書いてますが、書いた本人も、訳した人もわかってないだろう、という感じです。
まあ、日本のある天才が、第8段階を見事描いたのですが、それは後述。


さて、リリーの主張は、社会的にも健康上も受け入れられるものではないのですが、この思想から「電子デバイスを通じた人間知性の拡張」というコンセプトが生まれます。
その成果は、全世界で実現してますよね。
「そうiPhoneならね」

iPhoneというのは、アラン・ケイが、「MEMEX」と「Xanadu」を携帯できるように構想した「DynaBook」を具現化したものです(ケイ自身は両者の影響を明言はしてません)。

つまるところ、日本が受け入れられなかったITは、単に便利な新技術なのではなく、技術により人間の知性を進化させたいという思想が中心あったのですが、思想を嫌う日本では、その表面をなぞるしかできず、社会の中に存分に取り入れることもできなかったわけです。

日本人は、思想やビジョンの重要性を、もう少し実感した方がいいでしょう。

さて、長くなりましたが、最後にリアリー思想の日本における継承者について紹介しておかなければいけません。

リアリーの思想の中で興味深いものに「SMI^2LE」(Iは二乗)があります。
宇宙移民(SPACE MIGRATION)、知性増大(INTELLIGENCE INCREASE)、寿命延長(LIFE EXTENSION)の頭文字をとったものです。

「将来人類は、自分の好みにデザインした惑星である H.O.M.E.s(High Orbital Mini Earths 高軌道のミニ地球)に移住する。宇宙に出ると意識拡張が起こる」というものです。

どこかで聞いたことありませんか?

「ララアにはいつでも会いに行けるから」とか言ってますよね。


まあ、当人は「ハイラインの『宇宙の戦士』をモデルにしました。宇宙コロニーはオニールの構想です」といって、決してリアリーの名は口にしませんが・・・

 

2018年12月11日 (火)

【読書メモ】いちばんやさしいブロックチェーンの教本(インプレス) [杉井靖典(著)]

◆ブロックチェーンを取り巻くICT技術が理解できるバイブル的書籍◆

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カレンシーポート株式会社の代表取締役として実際にフィンテックシステムを開発している著者によるブロックチェーン技術の解説書。

ブロックチェーンというと「ビットコイン儲かりますよ」という山師的書籍か、「ブロックチェーンですごいビジネスが出来まっせ。ほんま、すごいんですよ」と技術度外視書かれた文系的な本か、「サトシナカモト論文によると、こう実装して」という純技術的な本が多い中、本書は絶妙なバランスで技術とビジネスのつなぎが書かれている。

著者がブロックチェーンを等身大に解説しており、つまるところ古い型の分散型台帳の実現方法の一つでしかない、だけど、こう応用できると書いているので、現実のブロックチェーンの姿とその可能性が客観的に理解できる。

僕は小学生の頃にPCブームでベーシックの洗礼を受け、PCのマニュアルを読んで基本的なプログラムの概念を学び、社会人としては企業の人工知能研究所に所属してプログラミングを学ぶなど、少しはコンピュータをかじっているのだけど、正直、暗号技術を真面目に勉強したり、分散DBのトレンドを追ってはいなかったので、ICT技術をバランスよく理解するのに、本書が役立った。

なんとか読み通したけど、少し読み応えはあったので、ど文系の人には難しいかもしれない。

とはいえ、この本のおかげで、ブロックチェーンに感じていたモヤモヤが解消した。
是非オススメしたい本。

2018年12月10日 (月)

【読書メモ】サイバー空間を支配する者(日本経済新聞出版社) [持永大 著/村野正泰 著/土屋大洋 著]

◆某大臣にも読ませたい◆

ICTを取り巻く技術や政策を網羅的に整理した本。
タイトルがおどろおどろしいのでジャーナリスティックな扇情的な本かと思えば、丁寧な調査に基づいた良質な本だった。
現在のICTを取り巻く米・中・欧の政策や国家戦略、セキュリティに関する課題などがわかりやすく整理されている。

情報の精度はイランの各施設を狙ったスタックスネットの解説などにも現れている。
従前は「イランの各施設を狙った」「Windows Serverの脆弱性を突いた」「USBを媒介に感染した」といったレベルで理解していた。
本書では、標的がシーメンスのPLC(工業機械の制御コンピュータ)で、核燃料の遠心分離機であることや、仕掛けた組織の情報が典拠をつけて記載されている。

某大臣が読んでいれば答弁でオタオタすることもなかったのに、と残念に思う。
(読んでも理解出来な可能性もあるが)

ICTを制度、政策、セキュリティ面で総合的に理解したい人には必読だろう。

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