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2021年10月20日 (水)

閃光のハサウェイ【アニメレビュー】



アニメ映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(以下『ハサウェイ』)は、1989年、まさにバブルと昭和と冷戦が終わるころに、ガンダムの生みの親である富野由悠季さんが発表した小説を、2018年に映画化を始め、なんやかんやで21年に公開された作品です。
つまり、30年前の小説の映像化ですね。

正直、古くからのファンの中には「あれを映像化しても、まったく、ちっとも面白くないぞ」と思っていた人も多かったと思います。
それが意外にもガンダム映画としては、大ヒットといえる興行収入20億円を超えるヒットになりました。
エリートの息子がテロリストになって自滅するという話でエンタメとして成立していなかったのですが、意外な健闘ですね。

コロナで他に娯楽がなかったなど、いろいろな要因があるかと思いますが、ISISやタリバンなどテロが身近になり、温暖化など環境問題が切実になったことで、現代人にとってテーマがリアルになったのかもしれませんね・・・と言うとそれっぽいですが、実は逆です。

富野が書いた『ハサウェイ』は「赤軍の子供たち」の話です。
つまり、ガンダムでニュータイプという、ヒッピーでラブ&ピースでフラワーチルドレンな救済を描いたけど、学生運動では世界は変わらず、Ζガンダムでは学生運動ブントの抗争を描き、赤軍派ネオジオンはあさま山荘(アクシズ)で自滅して、三島由紀夫(シャア)は市ヶ谷で誰にも理解されず死んでいった。

そんな敗北の後、世の中はバブルとラブコメブームで恋愛至上主義と消費社会に移行し、しらけ世代が「政治、だっせぇ」といっているときに、バブルの狂乱にも乗ることができなかった、遅れてきた青年がハサウェイです。
だから、彼は元カノのためにも、超絶美人ギギにも情熱をもてない、恋愛不能者として描かれているわけです。

たぶん、ハサウェイの同級生は、毎週末、ポンギにベンベで乗り付けて踊っています。

そんなユーミンで柴門ふみな東京ラブストーリ時代に「俺、三島のことわかりたいんだ」と言っている青年の話は「だっせぇ」し「生々しい」のです。

それが30年を経て、脱臭されて「リアルと感じる」程度には、遠い話になったということでしょう。(それと、現在がバブルの恋愛資本主義が破滅した時代という世相もある)

おっと、もう40行……導入が長くなってますね。巻いていきます。


私は『ハサウェイ』が最初三部作で公開と聞いたとき、話がぶつ切りになって、映画として駄作にしかならないと思ったのですが、意外とよかったです。
不条理カルト映画として見ると、話がちょん切られているというのもアリです。

この映画をカルト映画として見るなら、鬱気質の青年が、不条理を人生に感じ、恋愛にもテロルにも、本当の意味では情熱を感じないが、パイロットとして大空を駆け巡る時だけ開放感を感じられる、という話で、ええ話でした(涙)。


そんなハサウェイの敵ですが、軍隊の名前が「キルケー隊」といい、フラッグシップのロボットの名前は「ペーネロペー」といいます。
キルケーもペーネロペーも、オデッセウスという、広義でのギリシア神話に出てくる英雄の妻です。
ペーネロペーは、オデッセウスが戦争に行っている間、国と操を守った女性で西洋では純潔の象徴、キルケーは、オデッセウスの現地妻です。
オデッセウスの方は操を守ってないんですよね。まったく、男ってやつは……

正直、ペーネロペーやキルケーのエピソードが『ハサウェイ』の物語の何かを象徴しいる感じはありません。
「唐突なギリシア神話、なぜだろう」という感じですが、多分、宮崎駿への当てつけですね。

宮崎駿は『風の谷のナウシカ』を赤字ながら当てて巨匠あつかい。
これが許せなかったのでしょう。
「俺だって、ギリシア神話知ってるもん」とペーネロペーとキルケーを引っ張り出してきたんでしょう。

え?ナウシカは、宮崎駿のオリジナル漫画ですよって?
いや、ギリシア神話でしょう。

オデッセウスの冒険を描いたギリシア神話『オデュッセイア』に出てくる、オデッセウスが風で筏が吹き飛ばされて漂着する島の王女がナウシカアーです。

富野さん「宮崎がナウシカアーなら、俺はペーネロペーとキルケーだ」と。


さて、そういうわけで、『オデュッセイア』です。
英語では『ユリシーズ』ですね。

これは、小国の王、オデッセウスがトロイ戦争という、くそ下らない戦争に巻き込まれて、「もう木馬に化けて潜入しようぜ」とか言い出すところから始まる話です。


トロイ戦争が、どれだけくだらないかというと、始まりは結婚式に呼ばれなかったお局さん、女神エリスが「弟のアレスは呼んで、私は呼ばないとは許すまじ」と復讐することが発端です。

エリス……そういうとこやで。

で、エリスが、どんな嫌がらせをするかというと、結婚式の会場に「最も美しい女神へ」と書いたリンゴを放り込むのです。

世の女性は、一人の例外もなく自分が一番美しいと心から信じているので、さあ大変。
まあ、とりあえず、最終的には、女子グループの3TOP、ヘラ、アテナ、アフロディテの争いになります。
こういう女子の争いが起きたとき、男子は決して関わってはいけません。
しかし、うかつにもトロイの王子パリスが審判になってしまいます。

アホやなパリス。

で、自民党の総裁選のように賄賂合戦の開始です。
アフロディテがパリスに「この世で一番美しい女をやる」と言って総裁の地位を確保します。

「ということは、アフロディテがパリスの妻に?」と思いきや、パリスはヘレネーという女性を所望します。
いいのか、アフロディテ?

問題はヘレネーはすでに人妻だったということ。
そこは大国トロイの威圧力と女神の権威で押し切ります。
ミュケナイ国の王子の妻だったヘレネーを強奪。
ついでにスパルタの財宝も強奪です。
いや、別の国ですが……

全方位に敵を作ったトロイは、ギリシア連合軍に攻められるのですが、あまりに大国なので落とせないんですよね。
で、オデッセウスに参戦するよう要求が来るんですが、「そんなくそくだらねぇ戦争嫌や」と……

戦争は、いつも不毛ですね。

 

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