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2020年6月12日 (金)

AKIRA【アニメレビュー】

今日のアニメレビューは日本アニメ史の金字塔「AKIRA」だよ。


少し前に4Kリマスターが出たり、30年の月日が経っても色あせない不朽の名作です。とはいえ、なぜ今、わざわざ「AKIRA」に思いを馳せているかというと、やはりコロナのせいです。


ここのところ、ビジネスマンとしてはコロナ後の商機を考えつつも、本質的にはコロナが指示したものの意味と、人の生き方を考えざるを得ません。


私は、新型コロナが純粋に病気として、どれだけ恐ろしい病気かは正直わかりません。
しかし、コロナによるグローバルロックダウンが、一つの真理を指し示したと考えています。


それは


「人類は死を克服していない。克服することもない」


ということです。



ほんの少し前に ユヴァル・ノア・ハラリの「ホモ・デウス」がベストセラーになりました。
その要旨は、人類は疫病、戦争、飢餓という3つの生命の危機を(科学技術で)克服したので、サイボーグ化で不老不死を得たり、薬物で幸福をコントロールする神なる存在=ホモ・デウスになる、というものでした。


ハラリ自身の精神性はともかくとして、私は、人類はずいぶん増長したものだな、と生暖かく見ていました。


その人類の増長をあざ笑うかのようにコロナ禍が世界の動きを止めた中、不条理な死をどう見つめるべきか、私は明恵に関心を持ち、その論敵である浄土宗の中核経典である浄土三部経を眺めていました。
(5か国語を操る私とは言え、もちろん、漢文のお経やサンスクリット語は無理なので、日本語訳ですけど)



浄土三部経は『仏説無量寿経』、『仏説観無量寿経』、『仏説阿弥陀経』の3つのお経です。
無量寿経(大無量寿経)と観無量寿経は名前が似ているので紛らわしいのですね。



無量寿経(大無量寿経)は、法蔵菩薩が四十八願を立て、その中で西方極楽浄土(仏国土)を作り、すべての人を受け入れると誓う話です。
この四十八願の中核を「本願」といい、その意味を簡単に言えば「全員救う」ということになります。



阿弥陀経は、西方極楽浄土のビジュアル的なイメージを伝えるものと思えばいいと思います。



観無量寿経は、極楽往生の方法を書いているのですが、内容は瞑想=マインドフルネスです。
話の始まりは「王舎城の悲劇」という古代インドの一大スキャンダル、王子が王を幽閉し餓死させるという事件をベースに、王の妻=王子の母が、不条理な人生の苦しみから逃れる術をお釈迦様に尋ねる物語です。



さて、ではなぜ「AKIRA」なのかというと、そりゃ「AKIRA」が大無量寿経のアニメ化だからです。


それも極めて露骨で、一方の主人公である鉄雄(鉄人28号)のテーマ曲は大無量寿経そのものです。
曲名は「変容」です。
劇中では、鉄雄の力が暴走し、グロテスクな巨大胎児(怪獣=煩悩の化身)に変わり果てるときに流れます。


これを「泣いている」鉄雄を救いに来た金田がなだめ、鉄雄が異界に転生した時に、美しい女声合唱で「應時普地 六種震動 天雨妙華 以散其上 自然音樂 空中讚言 決定必成 無上正覺」と大無量寿経のクライマックス(極楽の情景)が歌われるわけです。
(曲名「変容」というのが、煩悩の化身=怪獣になる変容と、法蔵菩薩が阿弥陀如来に変容する二つの変容を描いているのが面白い)



この救われるべき煩悩が何か、ということは、物語を追っていてもなかなか明言はされません。
大友克洋さん自身が意識しているかもわかりません。



強引に読み解くなら「東京オリンピック」と「孤児院」がカギになるように思えます。
「東京オリンピック」は、戦後復興の象徴であり、科学と経済の発展が幸福に直結するという信仰を形にしたものと思えます。
金田や鉄雄が育った「孤児院」は、発展から取り残されたモノ、切り捨てられたものを示しているように見えます。



日本という国が経済さえ発展させれば「そのうちなんとかなるだろう(植木等=無責任)」と先送りしてきたものが、復讐にやってくる物語に見えます。
(映画における鉄雄の目的は、AKIRAの力を開放して、東京を消し去ること。鉄雄とAKIRA=28号と二つに分裂していた自己が鉄人28号として再統合されることで、完全な形で世界を滅ぼすわけですわ)
(なお東京=西洋物質文明に心を売った日本の象徴なのは関西人にとって常識ですね)



今回のコロナは、私には、世界が「まだ先送りするんですか?」と問うているように感じます。
観無量寿経で、釈迦は王妃の悲しみに対して「軍を率いて王子を倒し、王を救い出せ」とは言いません。
科学と経済という力の解決は本質ではないと言っているのです。



このテーマについて私の結論はまだありませんが、人間が神にはならないだろうことは、確信しています。




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