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2020年6月 9日 (火)

この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説【アニメレビュー】

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さて、「ミッドナイトゴスペル」で疲れた心と体を癒すため、今度は「この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」を見ることにします。

「この素晴らしい世界に祝福を!」(このすば)は、ライトノベルのレーベルである角川スニーカー文庫から発売されている、いわゆる「なろう系」小説が原作です。

「なろう系」というのは、web小説投稿サイト「小説家になろう」で書かれた小説のことで、多くはニートや引きこもりのような、なんの優越性もない主人公が、異世界に生まれ変わり、特殊能力を与えられてヒーローになるというプロットの話が多いです。

言うまでもないけども、これは極楽往生の話ですね。

ただ、おおくの異世界転生物は、現実のしがらみのない異世界で、棚ぼた的に異能を与えられ、葛藤なくちやほやされるという願望充足の話でしかないので、わざわざ解説する必要もありません。


小説や映画といった物語コンテンツには、大きく分けて、日常の苦痛を忘れさせてくれる麻酔系(ダウナー系)コンテンツと、世界の真実に目覚めることを突き付ける覚醒系(アッパー系)コンテンツがあります。

「ミッドナイトゴスペル」は、濃度の高いアッパー系で、異世界転生物はダウナー系ですね。


「このすば」も当然にダウナー系ですが、ご都合主義の異世界転生物の外しとして、少し捻りを加えているのが特徴です。

主人公の冒険仲間は女神と魔法使いと戦士、全員美少女ですが、女神は知性と慈愛にかけ、魔法使いはまともな魔法が使えず、戦士はドMというものです。
あとは、そういうズレたキャラクターが織りなすギャグ漫画を楽しむ構造です。
純然たる憂さ晴らしとして価値のある作品です。


さて、このような異世界転生物ですが、本来的には、純ダウナー商品ではありませんでした。

人が死んで常世に行く話です。
死を見つめて、生を理解するものが正統です。


この常世帰りの話は、やれオルフェウスだの、ギルガメッシュだの、イザナギだの超古典ですが、近代的な小説で開祖を探すと、まずは「ナルニア国物語」(1950年)になりますね。

 

ファンタジーバトル世界ということなら、イギリスの作家マイケル・ムアコックの「エターナル・チャンピオン」(1970年)があり、日本では高千穂遥の「異世界の勇士」(1979年)あたりが嚆矢になるのではないでしょうか?


アニメーションとして、エポックなのは、やはり「聖戦士ダンバイン」になります。
天才 富野由悠季が、1983年に放映した意欲作です。

海と大地の狭間にある、死後の魂が帰る場所「バイストンウェル」に妖精の妖力で生きたまま呼び出された人々が、世界の条理を破壊し、悲劇を生み出すという話です。

さすがは富野由悠季だけあって、現代的なダウナー娯楽としての異世界転生物ではなく、徹底的に「文学」をやろうとした意欲作です。


どのくらい文学かというと、主人公を呼び出した異世界の領主ドレイク・ルフトを取り巻く世界は、完全にシェークスピアです。


野心にあふれ、暗愚な主君を陥れて国を奪うドレイク、ドレイクの同盟国の王と不倫関係にある妻、娘はドレイクの仇の家の息子に恋をする。

これをおもちゃを売りたいロボットアニメでやるしかないのが富野由悠季の悲劇で、当然のようにおもちゃは売れず、スポンサーのクローバーは倒産。
良いものを作ればいいというものではない。商売というのは、難しいものです。

なお、「ダンバイン」のリメイク的作品であるアニメ版「リーンの翼」は(小説版という別の物語もある)、特攻隊員だった主人公がバイストンウェルに召喚され、戦国時代を生き抜いて王になり、現世の日本に復讐に現れるという、一段と狂気の増したお話なので、こちらもぜひ見ていただきたいものです。


 

 

 

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