2018年12月14日 (金)

【読書メモ】日本の税金 第3版(岩波新書) ["三木義一(著)]

◆中立的立場で書かれた日本の税制度解説書◆

Photo

複雑怪奇な日本の税制を体系的に学びたくて手にとった本。
読んでいると役人や政治家が、いかにその場しのぎで税制をイジってきたかわかる。

最も不誠実だと思うのはサラリーマン税制。

消費税導入の根拠をクロヨン(サラリーマンはきちんと課税されているが自営業者は補足できていない)、つまり「可愛そうなサラリーマンを救う」と言っておきながら、消費税が成立すると舌の根も乾かないうちに、「サラリーマンには手厚い所得控除があるから増税スべし」と手のひらを返したこと(本書P17-18)。
役人なんて、死んでも信じてはいけないことがわかる。

著者は、税制について国民の参加を募るべきで、そのためには税の情報開示をすべき、つまり痛税感を感じさせるべき、という考えのよう。

この点には同意できない。
消費税については、完全な内税化と、例外なき課税をすべきだと考えているから。

理由は、痛税感がなければ税負担は苦にならないし、内税にすることで税の実質的負担は、消費者と事業者(の利益)で適切に分配されるから。
逆に言うと、事業者が「利益を減らしたくないから間接反対」と言っていたのをごまかすために、「消費」税なんて変な税制になっているので。これは本来の「付加価値税」に戻すべきというのが、私の持論。
物を買うのに「罰金」を払うのは、少々理不尽だし、レジで金額が変わるのは消費意欲を大幅に減殺するから。

とはいえ、ブラックボックスになりがちな税を、中立的立場で国民にわかりやすく解説するという意味では、本書は貴重だと思われる。


2018年12月13日 (木)

【読書メモ】ほんとうの憲法: 戦後日本憲法学批判(ちくま新書) [篠田 英朗(著)]

◆戦後憲法論の不毛が見える◆

Photo

憲法における、特に9条の解釈を、憲法学的な文理解釈ではなく、国際法(条約)や既存の各国法制、特に英米法との関係から見つめ直そうという内容。

軍学者の兵藤八十八氏が、加憲(9条の改正ではなく、3項で自衛隊明記で自衛隊を合憲化する憲法改正手法)の合理性が分かる本と紹介していたので読んでみた。

印象としては、安倍総理の改憲論の理論的背景はこの人なんだな、ということ。

現状の国際法では自衛以外の戦闘行為は認められておらず、
日本国憲法は、国際法を守らなかった大日本帝国に噛んで含めて国際法の遵守を求めたものに過ぎず、
9条で禁止する武力行使は、当然、自衛権の行使を含んでいないので自衛隊は当然合憲で、
集団的であれ個別的であれ自衛権に制約があるはずもない、

ということが明晰に描かれている。

戦後日本の防衛を巡る議論の不毛さが浮き彫りになる本。

2018年12月12日 (水)

読書メモ】世界史序説(ちくま新書) [岡本 隆司(著)]

◆本当は弱かった中国◆

Photo_2

「世界史」といえば高校の教科にもあり、当たり前の存在と思いがちだが、この本は「世界史」が本当に存在するのか、という問いから始まる。
「世界=全人類」に共通の「物語」などないということ。

そこで東西の定住農耕文明(中国と欧州)とそれらをつなぐステップ地帯の移動牧畜民族の交流と力関係の変化を物語の軸として、世界史を捉え直している。

読後感としては、遊牧民族側に視点を持つことで中国文明が相対化され、新鮮な視点で世界史を捉え直すことが出来た。
国の規模や軍事的な力は、むしろ遊牧国家が歴史を通じて優勢だったことがわかる。



2018年12月11日 (火)

【読書メモ】いちばんやさしいブロックチェーンの教本(インプレス) [杉井靖典(著)]

◆ブロックチェーンを取り巻くICT技術が理解できるバイブル的書籍◆

Photo_2

カレンシーポート株式会社の代表取締役として実際にフィンテックシステムを開発している著者によるブロックチェーン技術の解説書。

ブロックチェーンというと「ビットコイン儲かりますよ」という山師的書籍か、「ブロックチェーンですごいビジネスが出来まっせ。ほんま、すごいんですよ」と技術度外視書かれた文系的な本か、「サトシナカモト論文によると、こう実装して」という純技術的な本が多い中、本書は絶妙なバランスで技術とビジネスのつなぎが書かれている。

著者がブロックチェーンを等身大に解説しており、つまるところ古い型の分散型台帳の実現方法の一つでしかない、だけど、こう応用できると書いているので、現実のブロックチェーンの姿とその可能性が客観的に理解できる。

僕は小学生の頃にPCブームでベーシックの洗礼を受け、PCのマニュアルを読んで基本的なプログラムの概念を学び、社会人としては企業の人工知能研究所に所属してプログラミングを学ぶなど、少しはコンピュータをかじっているのだけど、正直、暗号技術を真面目に勉強したり、分散DBのトレンドを追ってはいなかったので、ICT技術をバランスよく理解するのに、本書が役立った。

なんとか読み通したけど、少し読み応えはあったので、ど文系の人には難しいかもしれない。

とはいえ、この本のおかげで、ブロックチェーンに感じていたモヤモヤが解消した。
是非オススメしたい本。

2018年12月10日 (月)

【読書メモ】サイバー空間を支配する者(日本経済新聞出版社) [持永大 著/村野正泰 著/土屋大洋 著]

◆某大臣にも読ませたい◆

ICTを取り巻く技術や政策を網羅的に整理した本。
タイトルがおどろおどろしいのでジャーナリスティックな扇情的な本かと思えば、丁寧な調査に基づいた良質な本だった。
現在のICTを取り巻く米・中・欧の政策や国家戦略、セキュリティに関する課題などがわかりやすく整理されている。

情報の精度はイランの各施設を狙ったスタックスネットの解説などにも現れている。
従前は「イランの各施設を狙った」「Windows Serverの脆弱性を突いた」「USBを媒介に感染した」といったレベルで理解していた。
本書では、標的がシーメンスのPLC(工業機械の制御コンピュータ)で、核燃料の遠心分離機であることや、仕掛けた組織の情報が典拠をつけて記載されている。

某大臣が読んでいれば答弁でオタオタすることもなかったのに、と残念に思う。
(読んでも理解出来な可能性もあるが)

ICTを制度、政策、セキュリティ面で総合的に理解したい人には必読だろう。

«土屋鞄の「トーン オイルヌメ・ショルダー」を買った